古家の屋根より高き大芭蕉
庭に出て線香花火や雨上り
やがて又鳴き出す虫はいとゞかな
今落ちしばかりの葛は赤きかな
かげろふの歩けば見ゆる細き髭
今宵またくさばかげろふ灯に
赤とんぼ葉末にすがり前のめり
鵙の声やめば静かや九品仏
椋鳥の群落しゆく木の実かな
盆の上の西瓜の水のこぼれさう
水引にひつかゝりたる芙蓉かな
草市の香にひたり歩きけり
草市に漸く多き人出かな
すいすいと子供花火や松の間
燈籠をのせてこぎゐる姉妹かな
水におきし燈籠流れはじめけり
草深くひくゝ鳴きゐる虫もあり
だんだんと星明らかに虫しげし
秋風や簾の外の庭の木々
新しき葛の落花に佇みぬ
四阿や秋の夕日の一ぱいに
落ちかゝる葉先の露の大きさよ
近よれば髪の上まで萩の花
夕日まだ花萩叢のいただきに
蓑虫の留守かと見れば動きけり