和歌と俳句

芭蕉

芭蕉野分して盥に雨を聞く夜かな 芭蕉

鶴鳴其声に芭蕉やぬれぬべし 芭蕉

芭蕉葉を柱にかけん庵の 芭蕉

芭蕉葉は何になれとや秋の風 路通

物書に葉うらにめづる芭蕉哉 蕪村

露はれて露のながるゝばせを哉 白雄

隣からともしのうつるばせを哉 子規

蚊柱もたたずなりたる芭蕉かな 虚子

がさがさと猫の上りし芭蕉哉 子規

禅寺や芭蕉葉上愁雨なし 漱石

丸き窓にともし火うつる芭蕉かな 虚子

高き窓に芭蕉婆娑たる月夜かな 虚子

水うつてざぶと音する芭蕉かな 虚子

藁寺に緑一団の芭蕉かな 虚子

初秋の芭蕉動きぬ枕元 漱石

壁に映る芭蕉夢かや戦ぐ音 漱石

芭蕉林雨夜ながら月明り 鬼城

ともし火と相澄む月のばせをかな 蛇笏

門内の虚空を煽る芭蕉かな 泊雲

東嶺と呼応す庵の芭蕉かな 花蓑

高々と一葉全き芭蕉かな 石鼎

童子二人担へば重し芭蕉の葉 泊雲

足あらふ来客をみる芭蕉かな 蛇笏

芭蕉葉や池にひたせる狩ごろも 蛇笏

水車小屋を推し包みたる芭蕉かな 虚子

茂りより芭蕉広葉の垂れし見ゆ 虚子

方丈の掃除きびしき芭蕉かな 喜舟

夜もすがら騒ぐ芭蕉や秋の宿 風生

露終に流れ出でたる芭蕉かな 石鼎

水霜にまつたき芭蕉広葉かな 茅舎

土砂降りに一枚飛びし芭蕉かな 茅舎

舵のごとくに濡れし芭蕉かな 茅舎

明暗を重ねて月の芭蕉かな 茅舎

古家の屋根より高き大芭蕉 立子

日一日寒くなりゆく芭蕉かな 万太郎

ありあけの露のはげしき芭蕉かな 草城

一痕の月あり芭蕉つゆけしや 草城

収穫の庭ひろびろと芭蕉かな 青邨

芭蕉葉やまぶしくも日のありどころ 淡路女

朝出して闇の芭蕉に對しけり 虚子

蔵壁にひた着く葉ある芭蕉かな 石鼎

大芭蕉壁をうしろに露しげし 石鼎

芭蕉葉の雨音の又かはりけり たかし

肱のせて窓に人ある芭蕉かな たかし

月ありて夕日うするゝ芭蕉かな 花蓑

芭蕉葉や秋白日を照返し 茅舎

堂々と露の柱の芭蕉かな 茅舎

月光の露打のべし芭蕉かな 茅舎

芭蕉葉や白露絨し日に匂ひ 茅舎

芭蕉林小き芭蕉草の中 青邨

芭蕉見てこころ躍りや何の故 槐太

露のすぢ几帳面なる芭蕉かな 青畝