秋の暮辻の地蔵に油さす
秋の燈やゆかしき奈良の道具市
鱸釣て後めたさよ浪の月
わたり鳥ここをせにせん寺林
渡り鳥雲の機手のにしきかな
露深き広野に千々の砧かな
桐の葉は落つくすなる木芙蓉
鵯のうたゝ来啼やむめもどき
道のべや手よりこぼれて蕎麦花
夜の蘭香にかくれたや花白し
さればこそ賢者は富ず敗荷
うれしさの箕にあまりたるむかご哉
天狗風のこらず蔦の葉裏哉
升呑の価はとらぬ新酒かな
賀茂河のかじかしらずや都人
物書に葉うらにめづる芭蕉哉
身にしむや横川のきぬをすます時
身にしむや亡妻の櫛を閨に踏
日は斜関屋の鎗にとんぼかな
修行者の径にめづる桔梗かな
きちかうも見ゆる花屋が持仏堂
蟲啼や河内通ひの小でうちん
摂待や菩提樹陰の片庇
待宵や女主に女客