尼寺や十夜に届く鬢蔓
梅さげた我に師走の人通り
摺鉢のみそみめぐりや寺の霜
行年や芥流るるさくら川
鴛に美を尽くしてや冬木立
鳴らし来て我夜あはれめ鉢叩き
腰ぬけの妻うつくしき巨燵かな
巨燵出て早あしもとの野河かな
炉開や裏町かけて角屋しき
楠の根を静にぬらす時雨哉
水ぎはもなくて古江のしぐれ哉
禅林の廊下うれしきしぐれ哉
榎時雨して浅間の煙余所に立つ
大兵のかり寝あはれむ蒲団哉
能きふとん宗祇とめたるうれしさに
虎の尾を踏つゝ裾にふとんかな
風雲の夜すがら月の千鳥哉
磯ちどり足をぬらして遊びけり
打よする浪や千鳥の横ありき
鰒喰へと乳母はそだてぬ恨かな
鰒汁の宿赤々と燈しけり
ふく汁の我活きて居る寝覚哉
秋風の呉人はしらじふくと汁
冬川やほとけの花の流れ去る