和歌と俳句

加藤暁台

ふり袖のやまとに長し日の始

太箸や後トにひかへし檜木山

鏡餅母在して猶父恋し

神の春楠もいはほと成てけり

元日やくらきより人あらはる ゝ

我と人と深山ごゝろや初日影

よろこびの雲見えそめて花のはる

此心我蓬莱のはな柑子

根つかせて見せばやけふの子の日草

京縞の頭巾で出たり薺うり

わかなつむ人をしる哉鳥静

はつわかな鰹も切べき日なりけり

わかなの日三輪の酒うり出初たり

梅咲て十日にたらぬ月夜かな

火ともせばうら梅がちに見ゆるなり

梅林を出て懐に梅のつぼみ哉

手向山有明ざくら咲に鳧

ほつかりと黄ばみ出たり柳の芽

二日見ぬ程や柳のおもかはり

青柳に山路のこ ゝろはなれたり

藪いりを獅子の口より見初けり

やぶ入や木履踏かく人ごゝろ

ゆきどけや深山曇を啼烏

はるの日や梅のあたりのつ ゞみ箱

袖たけのまつの中行春日哉