和歌と俳句

加藤暁台

はる寒し風の笹山ひるがへり

涅槃会や雲下り来る音羽山

松かぜのうしろになりぬ几巾

はるの雨肝癪持をなだめけり

春雨や猿子をいだく歯朶の露

わかくさやくづれ車の崩れより

負ふた子に をりては持せける

奥山や人住あればすみれぐさ

菫つめばちひさき春のこゝろかな

組落て雀はなかむすみれかな

人の親のやけ野の雉子うちにける

夜のありか又鳴かはすきゞすかな

きじ鳴やうしろは須磨の藻塩草

雨雲やをぐさかざして鳴ひばり

猪垣の崩れ口よりあげひばり

陽炎の物みな風のひかりかな

かげろふの中来てくらむ戸ロかな

恋ねこのほだしも廿日ばかり也

こひ猫やわが古寺になき別れ

帰る雁蝦夷が矢先に待る ゝな

ゆき果しとおもへば雨夜の雁ひとつ

春寒し比良の日向帰るかり

西山や日の上を行雁のすぢ

紅梅や照日降日の中一日

紅梅や檜垣崩れておぼろ月