こゝろほどうごくものなし春の暮
春の夜の月も推なり梅柳
はるの夜の月より明て天竜寺
春の夜の月に宿かれ花柑子
ともし火にこがる ゝ蝶を夢路かな
梅に月朗詠うたふ人あらむ
くらき方はけぶるがごとしはるの月
大ぞらにかりがねくらし春の月
鶯の嘴あらひせり紙や川
鶯と顔見合する折戸哉
うぐひすの七ツとまりや清閑寺
鶯の咽ふくらめしゆふ日かな
八重霞日落ていまだ夜ならず
山くれて霞下せり大炊川
春風や浅田の小浪あさみどり
はるかぜに吹れて落す羽織かな
鳥の羽を見れば行なりはるの水
春の水東寺の西にみる日かな
しらうをの骨身を浹すか ゞりかな
しら魚やうき世の闇に目をひらき
軒うらや干鱈かけたる鹿の角
信楽の茶うりがさげし干鱈かな
日くれたり三井寺下る春のひと