水鳥の胸に分けゆく桜かな
鶯や年の関越す花ごころ
たね麻やぐるりにうつるやけ畑
鶯に朝日さす也竹格子
朝霞み峠を越ゆる馬の息
永き日や太鼓のうらの虻の音
きのふけふ風のかはきや梅の花
あら土の畑にちるや梅の花
しら梅や星なき雪のうは曇
鶯の啼やくまなき朝かがみ
出てゐるや梅のつぼみに三日の月
まつ風にほそみの出る四月かな
麦の穂のはづれはづれやあじろ笠
風ながら小麦の秋の半かな
二三日蚊屋のにほひや五月雨
杜若さくや日照の朝曇
八畳に炉たたみ青し衣かへ
時鳥雨のかしらを鳴て来る
首たてて鵜のむれのぼる早瀬哉
日の入や蚊の湧かへる若楓
若竹や道のふさがる客湯殿
松の葉をつめたう握るほたる哉
冷や冷やと小路へはいる残暑かな
八朔と節句を添て月二夜
稲むしろ近江の国の広さ哉