松永貞徳
松ならび穴へ餅ひき子のひ哉
正月の礼者とながむいぬの年
霞さへまだらにたつやとらの年
初とらの泥障で参れ鞍馬寺
鳳凰も出でよのどけきとりの年
野寺あれて跡にやはゆる仏の座
かははがれからきめやみる山椒の木
信あれば是も飛梅の奇特かな
紅梅やかの銀公がからごろも
花よりも団子やありて帰雁
ねふらせて養ひ立よ花の雨
しほるるは何かあんずの花の色
つくつくし売るやはかまの町くだり
ゆきつくす江南の春の光哉
門前に市も立花の盛哉
雪月花一度に見する卯つ木かな
烏には似ぬうの花ぞ鷺の色
高野山谷の蛍もひじり哉
暑き夜の星はあせぼかあまの原
山の腰にはく夕立や雲の帯
七夕のなかうどなれや宵の月
正月にうちしは夢か玉まつり
皆人の昼寝の種や秋の月
つづりさせとちちち鳴くやきれぎれす
冬籠り虫けらまでも穴かしこ
降りかかる霰の酒の寒夜かな
おもしろくはらはら落る木葉哉