和歌と俳句

花の雨

ねふらせて養ひ立よ花の雨 貞徳

女等のぬれて戻りぬ花の雨 虚子

山寺の宝物見るや花の雨 虚子

花の雨十三詣見ずに去ぬ 泊雲

京三日二日は宿の花の雨 泊雲

柴漬を揚ぐる人あり花の雨 水巴

山寺の宝物見るや花の雨 虚子

花の雨路地深く入りて書画の会 泊雲

大藪の揺るる夜空や花の雨 水巴

長烏賊の桶のくらさや花の雨 石鼎

啓書記の達磨暗しや花の雨 虚子

仏華さげし人うしろ来る花の雨 石鼎

おもひ川渡れば又も花の雨 虚子

バイブルをよむ寂しさよ花の雨 久女

ぬかづいてねぎごと長し花の雨 久女

いとどしくぬるる床几や花の雨 万太郎

花の雨降りこめられて謡かな 虚子

花の雨傘持ちかへて仰ぎ居り 虚子

花の雨ふりて人来ぬ峠かな 普羅

望郷の子のおきふしも花の雨 久女

下の屋根濡れ光りつつ花の雨 石鼎

花の雨夕べちかく霽れにけり 石鼎

花の雨あがりて花をそこなはず 石鼎

晴れかけて炊煙こめぬ花の雨 石鼎

花の雨夕べ鏤ばむ松の露 石鼎

娘がゐねば夕餉もひとり花の雨 久女

花の雨風添ふ鴛鴦の浮寝かな 秋櫻子

松むしり松に鳴くなり花の雨 秋櫻子

花の雨鳰はまつたく見ずなりぬ 楸邨

白雲のほとおこり消ゆ花の雨 虚子

脇堂の泊り遍路や花の雨 月二郎

花の雨竹のはやしのあかるしや 万太郎

花の雨けさ瀬の音の遠のける 万太郎

花火など揚つてゐるや花の雨 青邨

花の雨濡れて鴉のかけりけり 汀女

花の雨鳰はまつたく見ずなりぬ 楸邨