瀬の音にあしたの花の夢もなし
我等夫婦田舎道者や春の風
太閤の一文字石やかづらの芽
案内者の長き袴も遅日かな
花の下燈心ほどの水白し
春雨に敷石長き宮居かな
千本に肴屋多し春の雨
政庁の前の大路や青柳
花人の草履の塵に朽つる橋
髪結に出でたる妻や春の雨
花の雨十三詣見ずに去ぬ
京三日二日は宿の花の雨
蝶飛んで草に溢るゝ噴井かな
花の雨路地深く入りて書画の会
葉の驕りにすねて小さし豆の花
土恋へる廚の葱や春の雨
澄みわたる星の深さや門の梅
涙ためて背戸に立つ児や豆の花
蘆の芽に湛へて渦のゆるきかな
花の冷落柿舎は今西日なる
雪解や尋ね侘びたる田舎町
白酒をおしみてわかつ瓶子かな
寺障子連りて白し庭木の芽
午後の日の鏡の如し竹の秋