和歌と俳句

西山泊雲

鯛籠に折り添へ笹や春の雪

水温む洗濯石の二つかな

雪解のはねとぶ泥や松並木

麦踏に足の湯とるや三日の月

麦踏や寒さに堪へて小刻みに

麦踏や顔傾けて風に堪ゆ

今蒔きし籾華やかや藪の影

物日なる石段狭し種物屋

草に埋もれて挿木全く育ちけり

檻の鶴に一札高き木の芽かな

竜髯に雪解雫の艶やかさ

大靄の襲へる雪解畠かな

初午や鍵預りの古袴

麦踏やむき振替へて向ひ風

畦焼くや蜘蛛走り出し石の上

かゞむ僧に四五人たてり菊根分

竹の穂の絡まりて高き緋桃

藪空に拡ごる星や春の宵

簷雫いよいよしげし涅槃像

挿木辺やこまごま踏みて下駄の跡

や幾つ転べる木の輪切

伐口に簇り咲きぬ梅の花

千仭を落つ時長し椿かな

藪よけて花の山見る縁柱