和歌と俳句

西山泊雲

物の芽に額相寄せうづくまり

茎立や親葉郤け勃然と

茎立や親葉明りに包まれて

蕪一つ畝にころげて茎立てる

虎杖や蕨の束に添へ括り

波底やすかぜば見えて水草生ふ

つむや騒ぐ家鴨に眼やりつゝ

春雨や白々けぶる堰の水

柵にひたとよりたる花大枝

島影に吠えたつ小犬畑長閑

はてどなく日々春雪の少しづゝ

菊根分朽葉かた土そづり捨て

坂町の片側塀や花吹雪

抛られし纜うけしかな

一本の杭ぜの飛沫猫柳

額の芽や古木にも又根土にも

茎立をつゝみするどき親葉かな

春雨や磯の纜いくまたぎ

纜にせかれし水や汐干潟

やちまたに光る纜汐干潟

畦塗や笠阿呆かむり鍬はしり

老の腰尚も曲げてぞ畦塗れる

畦塗にぬりこめられぬ薊の葉

遅き日や日輪ひそむ竹の奥

涅槃像かけてあとさき壁のきず