苗床にうす日さしつゝ穀雨かな
掘返す塊光る穀雨かな
人気なき嵯峨藪道の遅日かな
枯蔓につもりてかろし春の雪
藪の穂のさゞめきゆるゝ春日かな
苗床の土くれあらし春の霜
底の穢のゆるぎそめけり水温む
境内につゞく面店壬生念仏
掘りあてし底の胴木や慈姑掘
揚雲雀雀は桑をあちこちす
梅散つて砂浄らかに根もとかな
塀の屋根に紅梅這はせ邸かな
藤房やもゆる嫩葉もなよやかに
流水や泡せきとめて猫柳
軛つけて草はむ牛や畔薊
ぼろぼろに朽ちし柴垣草萌ゆる
土深く指でかきとる菊芽かな
虎杖の尖葉ほどけず太さかな
春暁や筧の響く大廚
朝燕麦穂の露の真白なる
しがらみの落花熊手で掻流し
芽立樫しきりに古葉落しけり
おほまかにほぐれそめけり八ツ手の芽
靄中にうく日輪や花菜雨
トロツコの影うつりゆく花菜哉