和歌と俳句

西山泊雲

苗床にうす日さしつゝ穀雨かな

掘返す塊光る穀雨かな

人気なき嵯峨藪道の遅日かな

枯蔓につもりてかろし春の雪

藪の穂のさゞめきゆるゝ春日かな

苗床の土くれあらし春の霜

底の穢のゆるぎそめけり水温む

境内につゞく面店壬生念仏

掘りあてし底の胴木や慈姑掘

揚雲雀雀は桑をあちこちす

散つて砂浄らかに根もとかな

塀の屋根に紅梅這はせ邸かな

藤房やもゆる嫩葉もなよやかに

流水や泡せきとめて猫柳

軛つけて草はむ牛や畔

ぼろぼろに朽ちし柴垣草萌ゆる

土深く指でかきとる菊芽かな

虎杖の尖葉ほどけず太さかな

春暁や筧の響く大廚

麦穂の露の真白なる

しがらみの落花熊手で掻流し

芽立樫しきりに古葉落しけり

おほまかにほぐれそめけり八ツ手の芽

靄中にうく日輪や花菜雨

トロツコの影うつりゆく花菜哉