埋火や師のかへり待つ二タ法師
土間にありて臼は王たり夜半の冬
裏藪耐へて落柿舎高し朝の雪
断崖の雪たれて落ちず海蒼し
汽車は裾を大廻り行く冬の山
落葉踏んで去る友に閉めて蒲団敷く
菜畠へ次第にうすき落葉かな
焚つけてなほ広く掃く落葉哉
今出でし炉火想ひ行く枯野哉
往来人皆背ぐくまり枯野道
欠伸して人に見られし十夜かな
聴法に柱が邪魔の十夜かな
お十夜や説法にけて月に歩す
落葉して町中に大樹憎まるゝ
矢大臣の顔修繕や神無月
青竹をつみし列車や今朝の冬
行年の人や嶮しき秤の目
布子著て庭に出る児や花八ツ手
犬なぶる烏面白し麦を蒔く
酒庫深くこぼれて白し酒の粕
柱暦の大吉日や寒造
山川の高波にとぶ千鳥かな