和歌と俳句

枯野

三日月を相手にあるく枯野哉 子規

秋ちらほら野菊にのこる枯野哉 子規

とりまいて人の火を焚く枯野かな

信長の榎残りて枯野かな

わらんべの犬抱いて行く枯野かな

汽車を逐て煙這行枯野哉 漱石

灰色の空低れかかる枯野哉 漱石

わが影の吹かれて長き枯野哉 漱石

傘さしてゆくや枯野の雨の音 虚子

追うて逃げる鴉かしこき枯野かな 碧梧桐

遠山に日の当りたる枯野かな 虚子

この道に寄る外はなき枯野かな 碧梧桐

野は枯れて目にしるき山や噴火烟 碧梧桐

野は枯れて蘆辺さす鳥低きかな 碧梧桐

臥牛山の麓の高野枯れにけり 碧梧桐

地に下りし鳶に引かるゝ枯野かな 碧梧桐

大雪のあとの雪なる枯野かな 万太郎

炭つぐや枯野の宿の爐二つ 万太郎

浅草の塔がみえねば枯野かな 万太郎

烟るなり枯野のはての浅間山 鬼城

大島の空搏つて飛ぶ枯野かな

一軒家天に烟らす枯野かな