和歌と俳句

みそさざい 三十三才

雪がこひするやいなやにみそさざい 浪化

花にとは願はず雪のみそさざゐ 千代女

鷹の目にこぼれものありみそさざゐ 千代女

竹の音まるける頃やみそさざゐ 千代女

木守の柚に来て啼やみそさゞゐ 也有

壁くろや鼠行あふみそさゞゐ 暁台

あと先に雀飛びけり三十三才 白雄

袂まで来て帰けりみそさゞゐ 青蘿

捨石のかげで飛けりみそさゞゐ 青蘿

みそさざいちつといふても日の暮る 一茶

みそさざいチヨツチヨツと何がいまいまし 一茶


菜屑など散らかしておけば鷦鷯 子規

山越しに窟のある三十三歳 碧梧桐

桑老木倒れしもあり三十三歳 碧梧桐

庭にこぼす十能の火や三十三才 虚子

牧水
窓にさす 午後の日ざしに 心うきて 立ちいづる庭に みそさざい鳴く

牧水
すがれつつ なほ咲く菊の 根がたなる 枯葉のかげに みそさざい鳴く

牧水
すがれ咲く 菊よりとびて みそさざい 梅の枯枝に あらはなりけり

牧水
鵯の鳥なきかはしたる松原の下草は枯れてみそさざいの声

牧水
まろやかになびき伏したる冬枯の草むらのなかのみそさざいの声

牧水
部屋にまだ 灯のあるものを みそさざい 障子のそとの 竹に来啼ける

牧水
上枝より こぼれ落ちたる みそさざい 胡頽子の下枝に 落ちとまり啼けり

牧水
つぎつぎに 所を変へて なく鳥の みそさざいはなく 常に低き枝に

憲吉
ふゆ庭の石より立てる音かそけし姿のはやき三十三才どり

山頭火
どこかそこらにみそさざいのゐる曇り

山頭火
ついそこまでみそつちよがきてゐるくもり

みそさざい日向ぼこりはうしろむき 汀女

みそさざいかさと居しより久しけれ 汀女

三十三才あとはばたばたと夕餉かな 汀女

干笊の動いてゐるは三十三才 虚子

みそさゞい昨日のけふといひがたき 万太郎

世に遠きことのごとしや鷦鷯 楸邨

鷦鷯ひそかに過ぎし午前午後 楸邨

茂吉
あまづたふ日の照りかへす雪のべはみそさざい啼くあひ呼ぶらしも

みそさざいふりしく暮雪紊るなし 蛇笏

庭におく深雪の石にみそさざい 蛇笏

木は風の行方をさだめ三十三才 双魚