みたくなき夢ばかりみる湯婆かな
はつ冬や太白といふさつまいも
柊の花や空襲警報下
停車場の柵にも大根干せるころ
石段の落葉ふみふみ上りけり
しぐるゝやあかぬ芝居の幟竿
枝々の切りくちしろきしぐれかな
みそさゞい昨日のけふといひがたき
なげ入れしくまでの燃ゆる焚火かな
一人退き二人よりくる焚火かな
夕みぞれいつもは不二のみゆるみち
かんざしの目方はかるや年の暮
昔、男、しぐれ聞き聞き老いにけり
肩に来る猫にも時雨きかせけり
辛うじて蝋燭ともる寒さかな
枯蘆の日にかゞやけるゆくてかな
熱燗や手酌いかしき一二杯
一ぱいに日をうくるなり冬の海
ふゆじほの音の昨日をわすれよと
ふゆじほの音におちこむねむりかな
冬ごもり掃きだすけふの埃かな
いまは亡き人とふたりや冬籠
しんしんと冷ゆる日のあり冬籠
著ぶくれの猪首もをかしかりけるが