和歌と俳句

久保田万太郎

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みたくなき夢ばかりみる湯婆かな

はつ冬や太白といふさつまいも

柊の花や空襲警報下

停車場の柵にも大根干せるころ

石段の落葉ふみふみ上りけり

しぐるゝやあかぬ芝居の幟竿

枝々の切りくちしろきしぐれかな

みそさゞい昨日のけふといひがたき

なげ入れしくまでの燃ゆる焚火かな

一人退き二人よりくる焚火かな

夕みぞれいつもは不二のみゆるみち

かんざしの目方はかるや年の暮

鎌倉の果から果の小春かな

昔、男、しぐれ聞き聞き老いにけり

肩に来る猫にも時雨きかせけり

辛うじて蝋燭ともる寒さかな

枯蘆の日にかゞやけるゆくてかな

熱燗や手酌いかしき一二杯

一ぱいに日をうくるなり冬の海

ふゆじほの音の昨日をわすれよと

ふゆじほの音におちこむねむりかな

冬ごもり掃きだすけふの埃かな

いまは亡き人とふたりや冬籠

しんしんと冷ゆる日のあり冬籠

著ぶくれの猪首もをかしかりけるが