外套の仕立おろしや酉の市
ふりいでし雨ぬれそめし落葉かな
しぐるゝや大講堂の赤煉瓦
青ぞらのみえてはかなき時雨かな
冬の雲月を去なして霽れにけり
ふきこみし柱の艶や年忘
焚きそへていぶる霜木や餅を搗く
餅の音深雪のものとなりにけり
難波津の小春の芝居見たりけり
山茶花や古き障子の中硝子
冬空やかの深川のかくれ住
歌舞伎座のうしろに住みぬ冬の空
浄瑠璃のかくれ稽古や冬の空
真夜中の灯の澄みやうや年の暮
酉の市山谷へ出づと月の中
月かけて晴れぬく空や酉の市
つけてすぐなじむ灯であり夕しぐれ
釜めしもみぞるゝものゝ一つかな
うつくしき日のてりそへる落葉かな
玉垣にまづさす冬の日かげかな
しぐるゝや水にしづめし皿小鉢
短日の身知らず柿といへるさへ
短日の恩にきることばかりかな
短日の読書室よりいでしかな
短日や襦袢の裄のやゝ長く