短日やことに雑木のさし交し
妹が門師走の月のけざやかに
餅の音あけはなれけり曇りつゝ
澤渡りの石に落葉のたまりけり
澤渡りの石ぬれそめし時雨かな
短日や鏡の中の山の膚
短日の耳に瀬の音のこりけり
短日の廊下に出れば灯りをり
箸割つて辻占出すや日短き
かなしさのたとへば消えし懐炉かな
久方の空いろの毛糸編んでをり
門のべの八つ手の霜をおもふかな
その朝や霜降橋の霜ふかく
くろかみに櫛の照りそふ冬夜かな
呼鈴の損じつくろふ冬至かな
はやばやと灯したてたり年忘
年忘猪を煮る火の熾りけり
五段目の猪の行方や年の暮
ふつつりと切つたる縁や石蕗の花
掃くすべのなき落葉掃きゐたりけり
来る花も来る花も菊のみぞれつゝ
鉄瓶の空になりをり日短き
枯草に立ちて熱き茶のみかはす
枯芝に立ちて熱き茶のみかはす
鉛筆でかきしハガキや霜日和