和歌と俳句

石蕗の花

其角
蝶ひとつとばぬ日かげや石蕗の花

鬼貫
引かへて白い毛になるつはの花

蕪村
咲べくもおもはであるを石蕗の花

几董
春秋をぬしなき家や石蕗花

一茶
ちまちまとした海もちぬ石蕗の花

漱石
御手洗や去ればここにも石蕗の花

漱石
本堂へ橋をかけたり石蕗の花

漱石
酒菰の泥に氷るや石蕗の花

漱石
貧にして住持去るなり石蕗の花

漱石
空家やつくばひ氷る石蕗の花


さびしらに枝のことごと葉は落ちし李がしたの石蕗の花

虚子
静かなる月日の庭や石蕗の花

泊雲
取りかへる支柱や石蕗の花

泊雲
石蕗咲くや汚れず古りし廻り縁

汀女
落つ雨にすぐ掃きやめぬ石蕗の花

万太郎
仮越のまゝ住みつきぬ石蕗の花

淡路女
日当らぬ家悲しけれ石蕗の花

泊雲
石蕗咲くや葉をしりぞけて茎太に

石蕗咲くや春夏秋冬花不断 喜舟

青邨
あたゝかな雨が降るなり石蕗の花

かな女
石蕗の花こゝ句をよみし庵なるに

たかし
今日となり明日となりゆく石蕗の花

風生
石蕗の花きびしき霜に襲はれぬ

山頭火
枯木かこんで津波蕗の花

青邨
絲よりも細き水落つ石蕗の花

立子
掃除して塵かたよせぬ石蕗の花

立子
花びらのまばらになりて石蕗の花

立子
ゆたかなる水の流れや石蕗の花

悌二郎
霜ふかき石蕗とていまを濡れにける

悌二郎
石蕗咲けり安房のあら浪けふを凪