和歌と俳句

帰り花 忘れ花

来山
何の木ととふ迄もなし帰花

才麿
帰り咲や狐川より志賀の花

芭蕉
凩に匂ひやつけし帰花

千代女
春の夜の夢見て咲や帰花

也有
手折れて跡は冬木や帰り花

也有
茗荷畑ありしあたりか忘れ花

白雄
かへり花咲よしもなく咲にけり

太祇
莟しはしらでゐにけり帰花

子規
帰り咲く八重の桜や法隆寺

子規
川崎を汽車で通るや帰り花

漱石
一輪は命短し帰花

龍之介
ひとり磨く靴のくもりや返り花

碧梧桐
御溝水帰り咲く花枝々に

碧梧桐
蓑ぬぎし晴れを思ふや帰り花

碧梧桐
並松も南下りや返り花

碧梧桐
日和見の漁長が家や帰り花

碧梧桐
避難港にかゝる旗亭や返り花

虚子
日に消えて又現れぬ帰り花

虚子
うかうかと咲き出でしこの帰り花

鬼城
藁積んで門の広さや帰花

淡路女
淋しさに馴れて住む身や帰り花

碧梧桐
飯櫃空らな返り花挿しあり

みどり女
草箒どれも坊主や返り花

みどり女
ただ一つ白きつゝじの返り花