和歌と俳句

大根

才麿
青首やおなじ緑の菜摘川

芭蕉
もののふの大根苦きはなし哉

芭蕉
菊の後大根の外更になし

一茶
かつしかや鷺が蕃する土大根

漱石
塚一つ大根畠の広さ哉

鬼城
大根に蓑着せて寐ぬ霜夜かな

牧水
昨日今日逢ふものはただおもおもと大根つけたるその馬ばかり

牧水
冬枯の荒野のなかのひとところに作られて大根真青なりけり

赤彦
暮れて洗ふ大根の白さ土低く武蔵野の闇はひろがりて居り

赤彦
大根こぐ少女を見れば丘の其所に我が家も近くある心地かな

憲吉
冬がれの林のまへに燃ゆるごとき見の悩ましき大根畑ありき

茂吉
山岸の畑より大根を背負ひくる女の童らは笑みかたまけて

百姓の頸くぼ深し大根引き 石鼎

大根今悉くなき畑かな 石鼎

泊雲
水さつとほとばしり出ぬ新大根

牧水
昨日今日 逢ふものはただ おもおもと 大根つけたる その馬ばかり

牧水
冬枯の 荒野のなかの ひとところに 作られて大根 真青なりけり

葉の霜もともに洗へる大根かな 石鼎

普羅
肩出して大根青し時雨雲

虚子
流れ行く大根の葉の早さかな

日当りに洗ひたてたる大根かな 喜舟

寺が干す芋茎の後の大根かな 喜舟

青邨
かゞやかに大根を洗ふはるかかな

風生
街道に大根洗ふ大盥

山頭火
のびあがりのびあがり大根大根

茅舎
生馬の身を大根でうづめけり

白秋
水のべに 洗ふ大根を さわさわに 見つつわが行く しろき大根

虚子
大根を洗ふ手に水従へり

虚子
大根を水くしやくしやにして洗ふ

万太郎
すでにして大根の煮え来りけり

誓子
大根を刻む刃物の音つづく

楸邨
終りに近きショパンや大根さくさく切る

静塔
大根を葉でぶらさげて湖渡る

立子
野川に日きらきら大根洗ひをり

立子
大根の土出し肩に日当れる