俊頼
都には 忘られにける 身なれども 寒さばかりは 訪ね来にけり
寒けれど二人寐る夜ぞ頼もしき 芭蕉
ごを焼て手拭あぶる寒さ哉 芭蕉
袖の色よごれて寒しこいねづみ 芭蕉
宵月の雲にかれゆく寒さかな 鬼貫
灯火の言葉を咲すさむさ哉 鬼貫
使者ひとり書院へ通るさむさかな 其角
両の手に朝茶を握る寒さかな 杉風
うづくまる薬の下の寒さ哉 丈草
山彦の口まで寒きからす哉 千代女
朝の日の裾にとどかぬ寒さ哉 千代女
引越た鍛冶やの跡の寒かな 也有
朝めしに三度鼻かむさむさ哉 也有
易水にねぶか流るる寒さかな 蕪村
皿を踏む鼠の音のさむさ哉 蕪村
水鳥も見えぬ江わたる寒さ哉 蕪村
それぞれの星あらはるゝさむさ哉 太祇
水指のうつぶけてある寒かな 太祇
鳴ながら狐火ともす寒かな 太祇
関処より吹戻さるる寒さ哉 一茶
我好て我する旅の寒哉 一茶
鳥の羽のひさしにさはる寒哉 一茶
かけ金の真赤に錆て寒哉 一茶
しなのぢの山が荷になる寒哉 一茶
死にこぢれこぢれつつ寒かな 一茶
本町の木戸りんとして寒哉 一茶
ひいき目に見てさへ寒き天窓哉 一茶
椋鳥と人に呼るる寒哉 一茶