和歌と俳句

松尾芭蕉

煤はきは己が棚つる大工かな

ありあけも三十日にちかしの音

盗人に逢ふたよも有年のくれ

初時雨初の字を我時雨哉

袖の色よごれて寒しこいねづみ

分別の底たたきけり年の昏

古法眼出どころあはれ年の暮

かりて寐む案山子の袖や夜半の

夜すがらや竹こほらするけさのしも

おさな名やしらぬ翁の丸頭巾

須磨の浦の年取ものや柴一把

雑水に琵琶きく軒の

うとまるる身は梶原か厄払

木枯やたけにかくれてしづまりぬ

せつかれて年忘するきげんかな

旅に病で夢は枯野をかけ廻る