和歌と俳句

松尾芭蕉

面白し雪にやならん冬の雨

薬のむさらでも の枕かな

磨なをす鏡も清し雪の花

ためつけて雪見にまかるかみこ哉

いざさらば雪見にころぶ所迄

箱根こす人も有らし今朝の

たび寐よし宿は師走の夕月夜

香を探る梅に蔵見る軒端哉

露凍て筆に汲干ス清水哉

旅寐してみしやうき世の煤はらひ

旧里や臍の緒に泣くとしの暮

其かたち見ばや枯木の杖の長

菊鶏頭きり尽しけり御命講

冬籠りまたよりそはん此はしら

五つむつ茶の子にならぶ囲炉裏

被き伏蒲団や寒き夜やすごき

埋火もきゆやなみだの烹る音

二人見しは今年も降けるか

米買に雪の袋や投頭巾

さしこもる葎の友かふゆなうり

皆拝め二見の七五三をとしの暮

初しぐれ猿も小蓑をほしげ也

人々をしぐれよやどは寒くとも

冬庭や月もいとなるむしの吟

雪の中に兎の皮の髭作れ