和歌と俳句

冬の雨

面白し雪にやならん冬の雨 芭蕉

垣よりに若き小草や冬の雨 太祇

霄やみのすぐれてくらし冬の雨 太祇

冬の雨火箸をもして遊びけり 一茶

武蔵野を横に降る也冬の雨 漱石

冬の雨柿の合羽のわびしさよ 漱石

紡績の笛が鳴るなり冬の雨 漱石

たまさかに据風呂焚くや冬の雨 漱石

煙突の煙棒のごと冬の雨 虚子

大木の表ぬれけり冬の雨 鬼城

冬雨や万竿青き竹の庵 鬼城

あさましく柚子落ちてあり冬の雨 石鼎

漁夫町はめ戸にそぼつ冬の雨 石鼎

晶子
冬の雨慄へて降れるそればかり心をぞ引くうき淋しき日

袖垣のかげにつく灯や冬の雨 万太郎

野菜庫へコックの傘や冬の雨 橙黄子

冬雨や襖に映る佛の灯 汀女

伐株の桑に菌や冬の雨 泊雲

枯木透いて屋根段々や冬の雨 みどり女

冬雨に濡れて歩くや孕み妻 月二郎

妻が添ふ厠通ひや冬の雨 月二郎

鋸のにぶき響きや冬の雨 草城

音やみていまだも降れり冬の雨 草城