西山泊雲
神無月や雨月の傘に散る紅葉
枯葎嵩の減りゆく時雨かな
霙るゝや籬の下へ下駄の跡
枯葉つけて椢聳えぬ雪の土手
マッチ摺れば玻璃戸に燃えて雪の夜半
電燈に吹雪明るき池館かな
庭木各々色定まりぬ冬構
焚火の輪解けて大工と左官かな
落月に簷すさまじや釣干菜
箒目に水仙浄し欅の根
雑木落葉上に朴葉や裏表
泥濘に今落し朴葉二三枚
萩枯れて斑愈々濃し鹿の親
八重葎嵩其まゝに枯れにけり
大根積むやぐいと曳きあぐ馬の面
葱ひくや昨日の霰そのまゝに
太秦は冬ざれもよし朱の扉
小春日のかげり早さや翠黛山
北斗冴えて藪に音ある時雨かな
伐株の桑に菌や冬の雨
疾き月の銅色に吹雪かな
初霜や傘減り枯れて箒草
叡山は明けごしらへや川の霜