和歌と俳句

小野炭や手習ふ人の灰ぜせり 芭蕉

炭屑にいやしからざる木のはかな 其角

庵買うて且うれしさよ炭五俵 蕪村

赤い実もはかり込だる粉炭哉 一茶

炭もはや俵の底ぞ三ケの月 一茶

炭くだく手の淋しさよかぼそさよ 一茶

炭出しに行けば師走の月夜哉 子規

鋸に炭切る妹の手ぞ黒き 子規

この炭の喞つべき世をいぶるかな 漱石

日当りや俵の中の炭の音 虚子

泣寝入る児が淋しひとり炭つぎぬ 山頭火

炭つかむ片手よごれたるまゝ 碧梧桐

炭挽く手袋の手して母よ 碧梧桐

鋸鈍く炭挽いて居る石の上

桜炭三ついけてそこへ火種かな 石鼎

炭一俵に竹四五本の庵かな 石鼎

桜炭にいぶりしものやもえて消えぬ 石鼎

枝炭に一片出たり枯紅葉 石鼎

炭つぐや髷の粉雪を撫でふいて 久女

炭ついでおくれ来し人をなつかしむ 久女

炭ついで吾子の部屋に語りけり 久女

炭ひくや薄日の中に切れてゆく 石鼎

切口へ日あたる炭や切り落とす 石鼎

指の先濃くも汚れて桜炭 石鼎

枝炭と広く汚れし掌 石鼎

月明りに粉炭乏しくなりにけり 虚子

炭出すや寒うち焚かぬ湯殿より みどり女

髷の雪ぬぐはず炭を足し居りぬ みどり女

丹念に炭つぐ妻の老いにけり 亞浪

粉炭に染みてなほある小石かな 普羅

学問のさびしさに堪へ炭をつぐ 誓子

大嶺や裾曲の道を炭車 誓子

炭つぐや浪花のやどり宵浅く 万太郎