ひよどりや赤子の頬を吸時に
大絃はさらすもとひに落る雁
鈴虫や松明さきへ荷はせて
澄む月や髭をたてたる蛬
酒さびて螽やく野の草紅葉
蜻蜒のくるひしづまる三ケの月
折釘にかつらや残る秋の蝉
下紅葉荏の実をはたく匂かな
生栗を握りつめたる山路哉
萩すりや傘すかす昔鞍
化野や焼玉黍の骨ばかり
清滝や渋柿さはす我心
鶏頭や松にならひの清閑寺
鬼灯のたぐひなす身や竜田姫
菊紅葉鳥辺野としもなかりけり
水鼻にくさめなりけり菊紅葉
重箱に花なき時の野菊哉
生棉取る雨雲たちぬ生駒山
みぞ萩や分限に見ゆるされかうべ
庭鳥の卵うみすてし落穂哉
粟飯の焦て匂ふや霜の声
横雲やはなればなれの蕎麦畑
松の香は花とふく也さくら茸