ひよどりや赤子の頬を吸時に 其角
鵯のこぼし去ぬる實のあかき 蕪村
ぬかづけば鵯なくやどこでやら 子規
我なりを見かけて鵯のなくらしき 子規
鵯の人をよぶやら山淋し 子規
峯の木や舌甜めあふて鵯の二羽 蛇笏
牧水
朝づく日 うすき紅葉の 山に照り つちもぬくみて 鵯鳥の啼く
牧水
くもり日の 森の深みに さまざまの 声して遊ぶ 鵯が群きこゆ
牧水
なにかいひ 何かささやく 曇日の 鵯がねいろは 人声に似る
牧水
曇りゆく 部屋の寒きに たちいでて そぞろに居れば 鵯啼きわたる
耕平
吹きとよむ 野分榛原 ひよどりの 飛びたつ聲は なほ悲しけれ
耕平
三原山 裾の榛原 うら枯れて 鵯鳥のこゑを 聞くべくなりぬ
鵯のしぼり啼きゐる松たかし 立子
鵯もおどろき我もおどろきぬ 茅舎
鬱蒼の杉をぬけ出て鵯さけび 立子
八一
わがたてる はたけのはてに きこえくる にはのこぬれの ひよどりのこゑ
鵯鳴く藪滲み出る有栖川 風生