和歌と俳句

柘榴

石榴喰ふ女かしこうほどきけり 太祇

はちわれて實をこぼしたる柘榴哉 子規

白秋
いと酢き赤き柘榴をひきちぎり日の光る海に投げつけにけり

柘榴が口あけたたはけた恋だ 放哉

柘榴の実一つ一つに枝垂れて 石鼎

うれそめし柘榴に雲の暗さかな 石鼎

花散りて甕太りゆく柘榴かな 久女

なまなまと枝もがれたる柘榴かな 蛇笏

かたくなに開かぬ小さき柘榴かな 淡路女

光こめて深くも裂けし柘榴かな 水巴

うらなりの柘榴目に濃き一つかな 石鼎

口あいて秋酣のざくろかな 花蓑

前栽の柘榴が笑めるよきまどゐ 風生

父がくれた柘榴はじめての実が揺れてゐる 山頭火

熟れざくろ濃き朝霧を噛んでゐし 鷹女

熟れそめて細枝のしなふ柘榴かな 麦南

簪も櫛もなき髪笑む柘榴 草田男

一粒一粒柘榴の赤い実をたべる 亞浪

石榴の実一粒だにも惜しみ食ふ 誓子

身辺に割けざる石榴置きて愛づ 誓子

ぼんやりと出で行く石榴割れしした 三鬼

号令の無き世柘榴のただ裂けて 草田男

子の声に応ふる空や柘榴割れ 林火

甕にさす實柘榴すこしうちたわみ 蛇笏

廃屋は人目なしとて柘榴裂くる 草田男