和歌と俳句

木の実落つ 木の実降る

猪の庭ふむ音や木の実ふる 太祇

はりはりと木の実ふる也檜木笠 子規

鍋蓋にはぢく木の実や流し元 子規

二つ三つ木の実の落つる音淋し 子規

利玄
土にまで矮樹のしげみ突き穿ち硬き木の實の真直に落ち来

梅もどきひそかなる実のこぼれけり 山頭火

落ち木の実或は泥をかぶりをり 橙黄子

木の実降る寺塀添ひにのぼりけり 播水

断崖を削りて落ちし木の実かな 泊雲

雨交り光り落ち来る木の実かな 泊雲

木の実とぶや草木ふるはす風の中 石鼎

木の実降る音からからと藪の中 虚子

雲われて漏れうごく日や木の実降る 石鼎

木の実降る風にうしろをみかへりぬ 石鼎

あひびきに尽きぬ話や木の実降る 草城

持つて寝る母の乳房や木の実雨 草城

木の実降る幹静かなる大樹かな 淡路女

旅笠に落ちつづきたる木の實かな 虚子

たゝずめばあちこち落つる木の実かな 草城

木の実降る石に座れば雲去来 久女

よろこべばしきりに落つる木の実かな 風生

ころげたる木の実の尻の白きかな 青邨

草ふかく木の実のおちたる音のしづか 山頭火

香取より鹿島はさびし木の実落つ 青邨

砲音の輪の中にふる木の実なり 赤黄男

赫土は弾子と木の実ころがせり 赤黄男

茫々と馬哭きければふる木の実 赤黄男

蘆花の碑にたてば木の実のひゞき落つ みどり女

木の実ふる心に暗きこともなく 占魚

木の実降る音を聞きつつ訪ひにけり 虚子

木の實落つきびしき音にむちうたる 汀女

母と子に夜も木の実の落ちしきる 多佳子

木の実落つわかれの言葉短くも 多佳子

子供等の帽投げ木投げ木の実降る 立子

栃老いて有るほどの実をこぼしけり 普羅

あきらめて橡の実ころげ出でにけり 普羅

もの縫ひて夜は夜の憂ひ木の実降る 信子

十王の笑むとし見れば木の実落つ 亞浪

木の実降る音きゝすましきゝとがめ 立子

来宮は木の実降る宮淋しき宮 立子

木の実降り鵯鳴き天平観世音 秋櫻子

子供等の帽投げ木投げ木の実降る 立子

点滴注射遠く遠くに木の実落つ 多佳子

来の宮は木の実降る宮ゆき見ませ 立子