畑中に唐もろこしと案山子かな
籠燈籠ともり初めたり月はまだ
お台場に虎杖しげり秋の雨
舟の音そこに聞ゆる雨月かな
ころげたる木の実の尻の白きかな
ぶら下る今は使はぬ砧かな
花芒とゞく水車の廂かな
曼珠沙華そろひ傾く水の上
万燈の花に縋りし子供かな
万燈の花ふるへつゝ山門へ
山門の上に月あり日蓮忌
新蕎麦の行燈かけし藁屋かな
日光は紅葉を葺いて祭かな
草の宿糸瓜の水を取つてゐる
寄進米寄進南瓜や千部経
とうきびの焼ける香や千部経
道のべやうす埃して秋茄子
みのりたる田に行燈や秋祭
椎の実の落つる中なる祭かな
初茸の出さうな山のつゞきけり
稲舟や女二人が棹さして
椎の木をはなるゝ月の明るけれ
二三本月に輝く芒かな