何かある烽火揚りて晴れし秋
灯がついて踊の音は大津かな
山下りて朝顔涼し京の町
秋草の仏下りや流しけり
大土手の葛のあらしのうねづたひ
一勺の酒の機嫌や落し水
病室のわれが名札や月あかり
雨雫ためてほうけし茸かな
はや咲きて萩の一叢星祭
七夕の竹今年竹去年の竹
舟べりに頬杖ついて月見かな
すゝき穂に出て古里を辞するかな
をみなへし又きちかうと折りすゝむ
収穫の庭ひろびろと芭蕉かな
芒振り新宿駅で別れけり
望の月板戸の芦を照らすなり
縁側の一番端の月見かな
甘橿の丘の雑木のもみぢかな
こち向いてぽかりぽかりと桔梗かな
牧場守こよひの薄折りゐたる
牧場守そこらに出でゝ月を見る
をみなへしふらふらゆれてよい月夜
みちのくのつたなきさがの案山子かな