一葉
葉がくれに一花咲きし朝がほの垣根よりこそ秋は立ちけれ
朝顔にわれ恙なきあした哉 子規
朝顔や我筆先に花も咲け 子規
朝貌や咲た許りの命哉 漱石
朝顔の日うら勝にてあはれなり 子規
蕣の入谷豆腐の根岸哉 子規
蕣や君いかめしき文学士 子規
きぬぎぬのうき蕣の莟かな 虚子
蕣の蔦にとりつく山家哉 子規
朝貌や垣根に捨てし黍のから 漱石
朝貌や古白が住みし古庵 虚子
朝顔の花咲かう間に起きもする 虚子
一葉
おのづからこぼれて生ひし種ぞとは見えぬ垣根のあさがほの花
一葉
中々にあれし垣根ぞおもしろきはひまつはれる朝顔の花
手をやらぬ朝貌のびて哀なり 漱石
朝顔のさまざま色を尽す哉 子規
浜に住んで朝貌小さきうらみ哉 漱石
朝顔や松の梢の花一つ 子規
朝顔の花猶存す午の雨 子規
朝顔や手拭懸に這ひ上る 漱石
朝顔のしぼりはものの鄙びたる 虚子
朝顔の一いろにして花多し 虚子
節
棚にしてからむ朝顔その蔓のたれしところに莟ふくれつ
朝皃や我に写生の心あり 子規
晶子
かしこうて蚊帳に書よむおん方にいくつ摘むべき朝顔の花
朝顔の今や咲くらん空の色 漱石
晶子
朝顔の蔓きて髪に花咲かば寐てありなまし秋暮るるまで
晶子
いそのかみ古き櫛笥に埴もりて君がやしなふ朝顔の花
暁の紺朝顔や星一つ 虚子
晶子
朝顔の小き花はうらがなし恋しき人の三十路するより
朝貌や鳴海絞を朝のうち 漱石
晶子
ひとり身の恐れと痛き淋しさを持つごと咲ける白き朝顔
晶子
朝顔は踊の所作に似る手挙げ江戸紫を藍がちに咲く
朝顔のつる吹く風もなくて晴れ 鬼城
朝日や朝顔さいて朝灯 鬼城