芭蕉
よるべをいつ一葉に虫の旅ねして
鬼貫
桐の葉は落ても下に広がれり
嵐雪
一葉散る咄ひとはちる風の上
千代女
文月の返しに落る一葉哉
也有
千葉どのゝ庭にもけさは一葉かな
太祇
一葉さへかさなりやすき日数かな
召波
褌の竿を落けり桐一葉
白雄
渡る瀬にあらしの桐の一葉哉
一茶
人去て行燈きえて桐一葉
一茶
秋蝉の終の敷寝の一葉哉
一茶
念仏に拍子のつきし一葉哉
一茶
寝た犬にふはとかぶさる一葉哉
稲妻にひらりと桐の一葉哉 子規
石上の梦をたゝくや桐一葉 子規
見てをればつひに落ちけり桐一葉 子規
隣からそれて落ちけり桐一葉 子規
桐一葉笠にかぶるや石地蔵 子規
井のそこに沈み入りけり桐一葉 子規
桐一葉月の光にひろがりて 虚子
我に落ちて淋しき桐の一葉かな 子規
白壁や北に向ひて桐一葉 漱石
ばつさりと後架の上の一葉かな 漱石
桐一葉日当りながら落ちにけり 虚子
牧水
落初めの桐のひと葉のあをあをとひろきがうへを夕風のゆく
雲を洩る日ざしも薄き一葉哉 漱石
濡縁に雨の後なる一葉かな 虚子
桐一葉一葉一葉の空仰ぎけり 山頭火
螺線まいて崖落つ時の一葉疾し 久女
線香の束とかばやな桐一葉 龍之介
線香を干したところへ桐一葉 龍之介
桐一葉さはりきし葉や揺れ合へり 青畝
乾きたる砂のけうらや桐一葉 草城