こころには松杉ばかりほととぎす
志賀越とありし被や菊の花
痩る身をさするに似たり秋の風
水音も鮎さびけりな山里は
あぢさゐを五器に盛ばや草枕
夢によく似たる夢哉墓参り
銭ほしとよむ人ゆかしとしのくれ
初空や烏をのするうしの鞍
目前に杖つく鷺や柳かげ
きく添ふやまた重箱に鮭の魚
土嘗てはにかむ顔がぼたん哉
初菊やほじろの頬の白き程
穂に出て世の中は田も疇もなし
白雲の竜をつつむや梅の花
名月や柳の枝を空へ吹く
山吹の移りて黄なる泉さへ
老ひとつこれを荷にして夏衣
河骨の花一時もさるほどに
雪は申さず先むらさきのつくばかな
川骨や撥に凋る夜半楽
一葉散る咄ひとはちる風の上
霜の菊杖がなければおきふしも
むめ一輪一りんほどのあたたかさ
はなを出て松へしみこむ霞かな