和歌と俳句

初空

初空やねまきながらに生れけり 素堂

初空や烏をのするうしの鞍 嵐雪

初空に手にとる富士の笑ひ哉 千代女

初空や袋も山の笑ひより 千代女

初空や鳥はよし野のかたへ行 千代女

壁の穴や我初空もうつくしき 一茶

初空の色もさめけり人の顔 一茶

塀合や三尺ばかりはつ空ぞ 一茶

初空の行留り也上総山 一茶

初空を夜着の袖から見たりけり 一茶

初空や烏は黒く富士白し 子規

初空や大悪人虚子の頭上に 虚子

初空や宮灯らねば只の山 石鼎

竈火のどろどろ燃えて初御空 石鼎

初空を映す磧や細り水 石鼎

初空や一片の雲輝きて 草城

初御空尊きまでにうち晴れて 石鼎

初空や武蔵に秩父晴れ渡り 喜舟

初空の下梅ばやし中にあり 万太郎

凍港の斂まる雲や初御空 蛇笏

真白さのつくばねうけよ初御空 鷹女

初空の下なる蕪畠かな 鷹女

初空の大青空は見れど飽かず 草城

初空やすでに聞こゆる羽子の音 万太郎

はつそらのたまたま月をのこしけり 万太郎

老いがたくこころにしみるはつみそら 蛇笏

初空に父在りと思ふ一礼す 鷹女

雪やみて官衙に強き初御空 蛇笏

初空の一角すでに凧たむろ 爽雨

初空に日かげ満ちたりまさやかに 草城

初御空古ることもなき海は語る 草田男

初空こそ時を剰すれ海真青 草田男

初空や東西南北其下に 虚子

初空を仰ぎ佇む個人我 虚子

傷一つ翳一つなき初御空 虚子

はつ空にうかべる雲のめでたさよ 万太郎

群鳶の舞なめらかに初御空 風生

岩伝ふ暗さ初空水いろに 悌二郎

初御空雪嶽谷川やゝ傾ぐ 悌二郎

初御空峰を守れる孤つ松 誓子

初御空大王松よりひらけたる 林火