和歌と俳句

久保田万太郎

一月やほとけの花のゆきやなぎ

初空やすでに聞こゆる羽子の音

初髪のふせてなまめく目もとみよ

葉牡丹のならびて寒に入りにけり

唐紙のあけたて寒に入りにけり

まゆ玉に鴛鴦浮く水の遠きかな

そろばんを弾く音はも福寿草

深川のたかばしとほき年賀かな

歯いたくていたくてならず切山椒

弾初にことし缺けたる一人かな

せりあげのなりものゝいま初芝居

枯芝の上にさしたる初日かな

塵の世の塵のうるさき福寿草

糸屑の膝につくさへ寒の入り

末の子の赤きジャケツや寒の入

ちかみちに抜ける空地の寒の空

草まくら旅にしありて雑煮ばし

われとわがこころに松を納めけり

金色の一すぢはしる破魔矢かな

鬼の来ぬ間の羽子の音きこえけり