西行
年暮れぬ春来べしとは思ひ寝にまさしく見えてかなふ初夢
初夢や額にあつる扇子より 其角
初夢や浜名の橋の今のさま 越人
初夢に古郷を見て涙哉 一茶
初夢の思ひしことを見ざりける 子規
初夢や金も拾はず死にもせず 漱石
初夢もなく穿く足袋の裏白し 水巴
初夢のなくて紅とくおよびかな 鷹女
初夢に枕のひくきホテルかな 波津女
覚めぎはに何か初夢見しごとし 石鼎
初夢のはかなくたのし古衾 淡路女
初夢の唯空白を存したり 虚子
赤鼻の池田の朝臣初夢に 青邨
初夢の扇ひろげしところまで 夜半
はつゆめのせめては末のよかりけり 万太郎
はつゆめやおぼえてゐたきこと一つ 万太郎
初夢に見たり返らぬ日のことを 草城
初夢のうきはしとかや渡りゆく 虚子
初夢のほのぼのと子に遠きかな 汀女
初夢の大きな顔が虚子に似る 青畝
初夢うつつほほゑみの国にあり 静塔
初夢の老師巨きく立たせけり 波郷
初夢を話しゐる間に忘れけり 立子
初夢や念頭病わすれ得ず 秋櫻子
初夢に一寸法師流れけり 不死男
初夢を言ひあふに死の一語あり 爽雨
初夢の煩悩穢れなかりけり 風生