初夢の大きな顔が虚子に似る
みちのくの南部の音や釜始
三寒の頬板よりも堅きかと
藁葺の権現やさし梅の花
春の雲追ふ心あり上京す
餅撒かれ菫踏まねばならぬかな
三夕の一夕の浦西行忌
春雷のしふねきこだま相模湾
行雁に向けり千体阿弥陀仏
旅行く日高嶺燕のむらがりを
彩窓に日永のステンドグラスかな
風に見え疾風に虚し桜貝
釈迦牟尼の産湯濁りて止むを得ず
濃紫黒よりくろし鉄線花
山羊に遣るわが麦笛を食べにけり
源三位嗣ぐ短夜の宿あるじ
代田べり拙き文字の馬頭尊
大噴水羽うつ白鳥さながらに
甚平やよしなしごとに容喙し
新涼の水に老けたり水馬
五重塔野分埃のまつしぐら
いつ止むとなしに出水の上の雨
山の雨薄の鎬洗ひけり
力あるロダンの言葉きりぎりす
コスモスの原といふべし英彦の坊
英彦の稲青きがうちに刈りて干す
水澄みて九つの弥陀現れたまふ
モジリアニの女の顔の案山子かな