和歌と俳句

阿波野青畝

甲子園

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初鴨のつぎつぎ陣を加へけり

火を一つ入れて亥の子に炉の祝儀

左頬を向くる勇無く息白し

冬海のにごりそめたり有磯海

去年今年またぎぬペンを持ちながら

うなづきて鴉のお世辞初明り

ふぶくとも山毛欅の小禽の静ごころ

大雪や山毛欅の諸枝どこか揺れ

冬磧紐のごとくに碍子垂れ

かんじきのあとをたどりてまた一人

風花をさきがけとしてだびら雪

水仙や亡命客の七言詩

きさらぎや出土の壺のすわらざる

空・寂の小墓二つやいとざくら

イースターエッグ立ちしが二度立たず

野を焼ける里びとを尼疑はず

野を焼きて海竜王寺暮れにけり

青丹よし奈良の都の墨

花吹雪三輪の神鼓を打つなべに

花の塵雀は親となりにけり

将軍の数奇まのあたり春の水

まどかなる頬に枕す寝釈迦かな

古寺を荘厳せむと牡丹の芽