年月日子をならべたる賀状かな
旅人にやさしき目して都鳥
石山や夕鴨明りほのぼのと
啓蟄の土はみみずの腹中に
復活の午餐のパンのにほひけり
和布買ふ石見益田の淋しさに
船底を万華鏡とし春の潮
雲退きてこころにくくも囀れり
一声の春の蚊を知る聖かな
翡翠の鋭目据ゑゐたりえごの花
方丈と庫裡とに継ぎ目梅雨の漏
はたた神夜半の大山現れたまふ
紫の紐のごとくに雷火かな
叡慮には禍多き夏の山
美保ヶ関涼しき波の上に灯る
河太郎のくつがへしける布袋草
秋天の釣橋を人つづかざる
比叡の山粧ひて伽陀起りけり
十夜僧鉢合せして笑ひけり
朴落葉ハンドバッグに収まらず
パチンコへ損をしに行き年忘
枯尾花にて終りたる絵巻かな
銀の箔聖夜の塵に拾ひけり