囀や当麻の塔のふたつながら 秋櫻子
囀や堤の下の梨畠 悌二郎
山の鳥きて囀ればおひるかな 烏頭子
囀や椋の梢のまばゆきに 喜舟
囀りの夕山くらし骨拾ひ 月二郎
囀や絶えず二三羽こぼれ飛び 虚子
囀りの高松ばかり箟取社 野風呂
囀も松風をやむ時のあり 櫻坡子
囀りをやめて居る間の枝渡り 汀女
ひそかなるあしたの雨に囀れる 三鬼
さえづりかはしつつ籠のうちそと 山頭火
囀りに風たつ雲のながれそむ 蛇笏
囀にぼそと人語をさしはさむ 汀女
囀や盲ひし心の扉にも来て 石鼎
囀や庵ほのあけに間ある空 石鼎
囀や松に日の来てあふぐ空 石鼎
森をぬく枯れし一木や囀りす 犀星
囀のこぼれて水にうつりけり 花蓑
さへづりのかたまりやすき真風かな 耕衣
囀の甘えたりしが後と静か 茅舎
さへづりの本丸さして坂のぼる みどり女
囀の草屋の内の観世音 たかし
御僧や今朝さへづりの揶揄に覚め 茅舎
囀をこぼさじと抱く大樹かな 立子
囀や春潮ふかく礁めざめ 楸邨
家のこと忘れてあれば囀れる 占魚
囀やアパートをいつ棲み捨てむ 波郷
囀や華厳の苑のみな無言 楸邨
囀の笛を吹くごと鈴振るごと 立子
囀りを臥して余生のごとく聞く 林火
囀りの斑雪の上にはじまれり 林火