万葉集巻二
磯の上に生ふるあしびを手折らめど見すべき君がありといはなくに
万葉集巻第十
かはづ鳴く吉野の川の滝の上の馬酔木の花ぞはしに置くなゆ
万葉集巻第十
我が背子に我が恋ふらくは奥山の馬酔木の花の今盛りなり
家持
池水に影さへ見えて咲きにほふ馬酔木の花を袖に扱入れな
樒かとまがふ山路の馬酔木かな 碧梧桐
牧水
登り来し路をはるけみかへり見る山のいただき馬酔木咲きたり
牧水
たけひくき馬酔木の花は山埴の赤きに垂りて鈴なりに咲く
牧水
茂り葉にこもりて白き房花の咲きしだれたる茂り葉馬酔木
牧水
雪なせるみじかき房のすずなりに咲きて垂りたり馬酔木の花は
ほろほろとあせびの花のちる春か 犀星
来しかたや馬酔木咲く野の日のひかり 秋櫻子
或る門のくづれて居るに馬酔木かな 秋櫻子
馬酔木咲く金堂の扉にわが触れぬ 秋櫻子
馬酔木より低き門なり浄瑠璃寺 秋櫻子
花あしびかづきて鹿の子くづり出つ 青畝
草庵の塵掃き落す馬酔木かな 青邨
鹿の尻あしびがくれに何時までも 泊雲
あしびより出したる鹿の首長し 泊雲
くろきものあしびがくれの鹿なりし 泊雲
こちに来る鹿やあしびの花つけて 泊雲
静かにも人あちこちす馬酔木かな 風生
大岩のごろりごろりと花馬酔木 風生
茂吉
のぼり来し比叡の山の雲にぬれて馬酔木の花は咲きさかりけり
風ぬるし馬酔木花咲く窓の下 淡路女
みささぎの馬酔木の花のありそめぬ 草城