初午や人のとだゆる宵の口
泳ぎ出てあやぶみ戻る蝌蚪のあり
桜草かへりみすれば色さみし
苗代や浄き白紙を鳥おどし
手を洗ふ田の水ぬるきげんげかな
飛びつれて白鷺迅し汐干潟
相よべぬ程に離れつ汐干人
千鳥ともいふ足あとよ汐干潟
花便り聞かせもしつゝ看護かな
春の日やたまをはぐくむ真珠貝
薬玉やちぎりめでたき古雛
風ぬるし馬酔木花咲く窓の下
凍解やくれなゐ潰ゆる万年青の実
啓蟄のわが門や誰が靴のあと
暖に笑ひこぼるゝ会釈かな
遊学の子に蔭膳やくれの春
かんばせの哀れに若し古雛
手拭を水に落とせし汐干かな
掻きよする貝殻鳴りぬ磯遊び
春愁や金槐集をふところに
我れ泣けば子も泣く春の愁ひかな
うらゝかの幼子ころび泣きにけり
昼湯より戻りて遊ぶ針供養
芝を焼く焔小さく走りけり
庭芝をうるほしやみぬ雛の雨