和歌と俳句

紫雲英 蓮華草

野道行けばげんげんの束のすててある 子規

雨はれてげんげ咲く野の夕日かな 放哉

赤彦
げんげ田に寝ころぶしつつ行く雲のとほちの人を思ひたのしむ

赤彦
げんげんの花原めぐるいくすぢの水遠くあふ夕映も見ゆ

赤彦
夕日さすげんげの色にかへるべき野の家思へばさびしくありけり

気まぐれをうかと来ぬげんげ濃き雨に 山頭火

或夜月にげんげん見たる山田かな 石鼎

げんげ田や鋤くあとより浸り水 亜浪

三日月に誓ふて交すげんげかな 水巴

紫雲英咲く小田邊に門は立てりけり 秋櫻子

蛇籠あみ紫雲英に竹をうちかへし 秋櫻子

げんげ束白混じれるをよしとせり 播水

風に揺るるげんげの花の畦づたひ 立子

やはらかに萎えたる花やげんげ束 立子

富士の雪解けぬまげんげさかりなる 水巴

切岸へ出ねば紫雲英の大地かな 草田男

手を洗ふ田の水ぬるきげんげかな 淡路女

咲いてゐる白げんげも摘んだこともあつたが 山頭火

泥地獄虚ろに紫雲英咲きにけり 烏頭子

秋篠はげんげの畦に仏かな 虚子

駆け下りぬげんげの畦の見えしより 

紫雲英野をまぶしみ神を疑はず 桃史

げんげんをむしりて蔽ふ魚籠の鮒 風生

たなぞこの子の掌ぬくとしげんげ咲く 鷹女

げんげ田はまろし地球のまろければ 鷹女

摘めど摘めどげんげ尽きねばかなしかり 鷹女

十本の指ありげんげ摘んでゐる 鷹女

愁ひ身にあれば紫雲英の野は白し 鷹女

こころ堪ふ古りしげんげの畦をゆき 鷹女

うつし世に人こそ老ゆれげんげ咲く 鷹女

相ともに座り残せしげんげ摘む 汀女

人知れず通ふ河原のげんげかな 占魚

入学の一と月経たる紫雲英道 多佳子

裸足の娘げんげの畦を音もなく たかし

げんげ田のうつくしき旅つづけけり 万太郎