初午や雪をのせたる四方の屋根
初午の藪の下みちくらきかな
雲一つなくてまばゆき雪解かな
干柿のなまなかあまき餘寒かな
ぜいたくは今夜かぎりの春炬燵
きのふにもいまごろありし雲雀かな
あかつきの靄にぬれたる椿かな
げんげ田のうつくしき旅つづけけり
石段をみ上げても日の永きかな
春の月さし入る門をひらきけり
たをやかにゆるる枝ある櫻かな
シクラメン花のうれひを葉にわかち
残雪のぬれぼとけみえ人出みえ
海苔あぶりながら話のつづきかな
塔の屋根青き三月来りけり
落椿足のふみどのなかりけり
目のまへの山の雪はも土筆つむ
木蓮のみえて隣のとほきかな
連翹のうす黄のさそふなみだかな
夕空にたかだか映ゆる櫻かな
花曇かるく一ぜん食べにけり
山吹も葉がちの雨となりにけり
葛飾の春ゆくことの迅きかな
風立ちてくるわりなさや春の暮
大事とる話ばかりや暮の春