さる方にさる人すめるおぼろかな
かんざしの金脚ひかるおぼろかな
おぼろ夜のいとしきものや土瓶敷
花咲いて竹の葉風の寒からず
花の雨浪花やすでにともりをり
咲く花に散る花にいのちまかせたる
雀堂落花の風のなかにかな
花人のおかる勘平をどりをり
花人のぬぎちらしたる草履かな
花人のしやつくりとまりかねしかな
花疲れみかんをむいてゐたりけり
賽銭の落つるひびきや花ぐもり
露地のまた露地の奥なり花曇
仲見世で買ひきしものやさ櫻漬
さくら湯やをりをり軒の雪しづく
きさらぎの口紅すこし濃かりけり
春水のあるひはながれいそぎけり
うららかに汗かく耳のうしろかな
わがうれひ鶯もちの青きにも
春浅きものまはりをり水車
またもとの土手にいでたる梅見かな
咲きすぎし梅たそがるる白さかな
東京の中の葛西の春田かな
ぬかるみをよけてあるくや紅椿
永き日や大き火鉢の中の灰